弔いの日

12月30日14時、銀次親分を送る会。
全国からお花が届き、芳名帳だけでも70名近くの参列をいただいた。
扉を開けて入って来るヒトは誰もみな腫れ目または号泣である。
当たり前だ。まだ誰にも意味がわからないけれど。
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蔵の中は定員25名だが親分の祭壇が幅を利かせており20名くらい。
受付を豆かあさんとあやこさんにお任せし、私は祭壇前の最前列にいたので
カフェのほうにどれだけはみ出しているかはわからなかった。
受付や記帳台が必要だなんて、ヒトの葬儀とまるで変わらない。
銀さんはみんなの親分なのだから、当たり前だ。
にゃんこ先生は「銀色はなかったけどいちばん派手なのを着て来たよ」と
背中に鳳凰の刺繍を背負っておられる。

焼香が始まり、前列から何度入れ替わってもヒトが途切れない。
全員がお線香を灯すうちに蔵の中は煙で真っ白もっくもくで
涙目に沁みるわにゃんこ先生もゲホゲホだわ、危険なほどに。
急遽入口上の扉を開け、蔵の二階の窓も開け、
エアコンで風を送り、サーキュレーターも投入。ゲホッホ。
(カンちゃん撮影 ↓)
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にゃんこ先生は「久々に1時間もお経あげたわー ヒトの葬儀でもなかなか」と。
一人一人の銀さんへの祈り、止まらぬ涙、別れの言葉、
それはそれは心がこもっているのだから当たり前だ。
お葬式はすると決めていたしにゃんこ先生にもお願いしてあったけれど、
ここまで立派な会になるとは思っていなかった。
オレ「喪主」とか呼ばれてて。
意味はわからないけど、最高に銀さんらしくエフらしく蔵らしい、
すばらしい会であることは確かだ。
ヘンな夢…早く覚めないかなぁ。
(miikoさん撮影 ↓)
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暮れに押し迫られたこんな日に、銀次一家を襲った突然の悲報。
駆けつけたほとんどの方が、年内最終の予定や任務をぶっ飛ばして
来てくださったことだろう。
お焼香して、「仕事に戻らないとならないので」と声を掛けてくださった方もたくさん。
暮れのギリギリまでお仕事していて、それでも抜け出して来てくださったのか。
忌引きを使ったのか、その顔で職場に戻れるのか、子分たちよ…
(miikoさん撮影 ↓)
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できるだけ長い時間銀さんと過ごせるよう、火葬場は最終の17時に予約してあった。
式が終わり、フロントシートのように二脚つないだ椅子を蔵の入口に置き、
銀さんを乗せ、みなで花で飾る。
ソラくんが、「ぎんたんひとりじゃさみしいから」と
黒猫のお人形とこんぺいとうを入れてくれた。
黒猫は、銀さんと分けっこした雲模様の青い手ぬぐいを巻いていた。
ソラくん銀さんに叩かれながら猫の触り方を習ったよね。
これからも他の猫さんたちをやさしくなでてあげてね。
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銀さんを看取ったリンさんもAさんも参列してくださった。
初めてお会いする子分さんも何人かおられた。
銀さんの姿をタブレットで写している男性がおられ、スカイプだろうか、
画面には涙している女性が映っているのが遠目に見えた。
あとでちひろさんと気づく。身重の体で関西のご実家に帰られていたのだろう。
それでも遠い地から、なんとか銀さんとの別れに立ち会おうとしてくださり、
旦那さんが中継の使命を。
ショックを与えてしまって心配だけれど、
ちひろさんの治療の支えとなっていた銀さんの命が、
強く強く赤ちゃんと母さんを守ってくれますように。


火葬場への出発1時間前、残ってくださっている方々に声を掛ける。
肉体との現実の別れに立ち会うかどうか、ゆっくり考えていただき、
心がそう望むなら、遠慮なく同行していただこうと思った。
ただ、体を炉に送るのは、最も辛い瞬間でもあるから。
(反対側から miikoさん撮影 ↓)
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出発5分前、ぷちにゃさんが到着。もちろん石巻から。
仙台から東京は新幹線で1時間半。
しかし電車が復旧していない石巻と仙台間はこれまた1時間半。
泊まりがけは必至の長い道のりを、猫正装で。

16:18上野着、銀座線へと走り、映画のラストシーンのように
ギリギリで間に合い、モフモフなままの銀さんの体に触っていただけた。
1月下旬には出張がてら浅草に寄ってくださる予定で、
お互い楽しみにしていたけれど叶わぬこととなった。

いったいいつ決めたんですかと訊いたら、今朝10時とのこと。
それまでは、あやこ隊長らに別れを託すつもりでおられたそうだが、
きっと後悔する、きっと仕事にならない、最後に一目、と
初売り前の忙しいときにすべてを投げ打って文字通り駆けつけてくださった。
予期せぬ別れであっても、まだその肉体に触れることのできる幸運を、
ぷちにゃさんはあの津波で身を以て知らされたのだ。
銀さんがつないでくれた石巻と浅草と猫とヒト。
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喪主挨拶 (miikoさん撮影 ↓)
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毎回私の猫の火葬に付き合っている母は「もう何度もいや」と言い、
晶子さんは「みなさんいらっしゃるし」と行かないつもりだったけれど、
豆かあさんとあやこ隊長が留守を引き受け送り出してくれた。
銀さんを抱いてタクシーの後ろ窓から振り返ると、
それはまるで映画で観た親分さんの出棺のように、
子分たちが歩道に並んでいつまでも車を見送っていた。


火葬場に着き手続き。
母、晶子さん、ナオト、父、雲龍ご両親、山田クン、
そして「これまであまりいっしょにいられなかったから」と
ぷちにゃさんとひそかさんも来てくださった。
10名も引き連れてというのはなかなかないと思われる。
実際待合室にも焼香室にも入りきってない。
係のおじさんは「銀次親分」という名を見て納得。
看板猫だったんですよ、子分が全国に300人いるんですよ、
突然死んでしまって、お葬式もして来たんですよ、と
子分ら口々に誇らしく親分を紹介する。
「そうなの、すごいねえ、立派なご位牌に、立派でいい写真だねぇ、
そうなの銀ちゃん、みんなにだいじにしてもらってよかったねぇ」
とおじさん。あたぼうよ。

屋上にある炉の手前の最上階に、菩薩像のおわす本堂がある。
おじさんは銀さんを箱ごと掲げ持って
「銀次親分です、よろしくお願い申し上げます」と神さまに挨拶した。
お葬式のお経のときもちゃんとフルネームで呼んでもらったんだ。

この霊園の好きなところは屋上からなにもかもが空に飛んで行くところ。
最後の最後のお別れはすべてを振り絞っての感謝。
愛しい愛しい銀次親分、さようなら、
ありがとう、ありがとう、ありがとう。
私たちのところへ来てくれてありがとう。
たくさんの愛と信頼をありがとう。


火葬が終わるまでの1時間、みんなで近くのカフェへ。
泣き笑いの、いろんな話。

18時に戻って少し待ち、骨を拾う儀式。係のおじさんが
「銀ちゃんは親分だし、太っているから大きい壷も持って来たからね」
ハァ?親分ですけど太ってないですシ!小さいのに入りますシ!
自宅に壷を3つ並べるとして、前列に風ちゃんれんちゃん、
後列に銀さんドーーンという絵もなかなかふさわしいけれど、
それ犬用やし…

デブではなく骨太、と称していた銀さんの骨は、特に太くはなかったものの、
寝ていたかたちがわかるほどしっかりしていた。
特に足はやっぱりすらりと長かった。まっすぐだと壷からはみ出しすぎで、
斜めにしてもまだはみ出していた。そんなことまでが誇らしかった。
足と頭部に続いて目立つ骨は、茶さじのようなかたちをしていた。
肩の骨と聞いて感激。オォあの胸厚を支えていた立派な肩の骨!

頭の骨はそれほど大きくもないというかむしろ小さいなぁと感じた。
猫はモッフでできているのだ。
おじさんが口の骨をつついて「おや、歯がないねぇ?」
へー歯って残るんだ。うん、一本もなくて正解です。
銀さんのことだから二度生えもあり得る、って言っていたよなぁ。
あ、これは爪だよ、これはしっぽの付け根だよ、と教えていただき、
へ〜〜かわいい!と一同いちいち感激。
しっぽの付け根の骨は猫兜のようなかたちをしていた。
猫又しっぽは妖怪の証なので、ヒトの目には見えなかった。

毎度のことだが、骨と接しているプロセスだけ、なぜか悲しみが引く。
普段見ることのできないものを見るふしぎにとらわれるからだろうか。
あのモッフの中身とはとうてい思えず切り離してとらえるのだろうか。
最後のひとかけらまでみんなで拾って、5%くらいはみ出し気味に
銀さんは小さい壷に収まった。
そこからあとは、ひたすら心との闘い、不在との闘いだ。

支払いも終わっておじさんが「よかったよかった、明日からお休みだし」
って、エ、HPには年中無休って書いてあったけど、やっぱり年末休みなんだ。
よかった… 銀さんは年内最後の猫かぁ。


エフに戻り、行っている間にさらに整然と豪華になった祭壇に
銀さんを安置する。
篭でなく花束でいただいた分はいくつものバケツに挿してあり、
水が漆の床にこぼれないよう、バケツの下には手ぬぐいが敷いてあり、
座布団は見たことないほどきっちり積み重ねられており。
子分を見れば親分の器がわかるってもんだね。
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残ってくれているみんなはハラペコなはずで、
晶子さんがデパートへ惣菜をたくさん買いに行ってくれた。
即座に切り分けたり盛りつけたりする頼もしい子分たち。
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巻き寿司の奥に見えているのはスライドショーの巻き銀。
前夜、灼ける腫れ目で約10万枚から500枚を選び、約40分でリピートする。
半日ずっとここにいてくれている子分たちは、これはあのシーン、とか
バシバシ言い当てるのはもちろんのこと、もう見飽きたとか言い出す。
選ばなくていいから10万枚無編集で入れろとか言う。
いやいや、オレが整理してないだけで使えるのは10%以下だから…
それでも数千枚だから… やるけどさ… やりますよ。


掲載誌コーナー。
銀さんのおかげさまでどれだけ店を宣伝していただいたことだろう。
私たちだけでは一生いただけないページ数をひとりで稼いでおられた。
最後の掲載誌の撮影はカミ先輩。できすぎだよなぁ。
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こんなに嗚咽が響く葬儀も滅多にないよね、
自分の葬式にここまで花は来ないよな、といちいち深くうなずいたり、
銀さん絶対まだここにいるよね、足もと気をつけようね、
あ、もう踏まれることもないのか、じゃあとっくにテーブルの上で
海苔でも食べてるね、とクスクス笑ったり。
こうしてヒトと話したり気遣ったり作業をして、バタバタと一日を過ごす。
ほんとうはみんな、カマイタチにバックリ切り裂かれたような心の傷口から
ドバドバと血が流れっぱなしだったはずだ。
朦朧としながらも、分け合えることにとても助けられて、
意味のわからない一日が終わろうとしている。

12月の月夜の森公演すべてをハリキッテ見守り、
大掃除で子分たちが集まる日に旅立ち、
力を合わせて葬儀の支度をさせた銀さん。
これが一日二日ずれていたら、人出の多い元日も休業しなくてはならなかったし、
さすがに家から出られないヒトも多かったと思う。
年内にすべて終わらせて、新しい年を開いて進んでゆけということなのか。
厳しいなぁ親方は…


通夜の夜中、琵琶さんから「お供えは袋から出すべし」と教えていただいた。
あやこ隊長が今朝築地で買って来てくだすった鰹節だよ。
お供えには、銀さんがずっと我慢して来た鰹節、海苔、猫缶、
ホイップもりもり、などなど。
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ぷちにゃさんが新幹線の中で描いてくださった銀次親分。
100本以上持っているペンの中から、
銀さんを描ける色をつかんでバスに飛び乗ったそうだ。
首巻きはやっぱり赤がいちばん映えたよね。
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まったくもって葬式にはふさわしくないけれど、
親分にふさわしいので遺影を銀ギラ銀に飾り付けた。
銀次親分がみなさまによい年を運びます。
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ヒトのいなくなった蔵に、銀さんの名を何度も呼ぶ。
明日は大晦日、カフェを再開するのだ。



Gallery ef, Asakusa, Tokyo
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