DAY 3

9月7日(水)22:30
皇居和田蔵門からバスで出発
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8日(木)5:00AM 国見SAでの朝焼け
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広大な田園風景。秋の空。
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バスが走る道路をはさんで反対側は荒涼としています。
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夜行バスで被災地ボランティアに行って来ました。
今も大津波の爪痕が残る宮城県亘理郡山元町。
約2500世帯があった地域が水没し、600名以上が亡くなった町です。

バスに乗っているのは男性32名女性11名の合計43名。
主に20〜30代、それ以上と10代の若者たちもちらほら。
夏休みの時期も過ぎたのに、頼もしい面々です。
学生さんたちは、バスの中で教科書を開いて勉強していました。


現地に着くまで作業内容はわからないということで、
班ごとにどこかのおうちに派遣されるのかなとイメージしていました。
8:30AM、役場が開くのと同時に到着し、現地で発表された任務は
「全員で側溝に溜まったヘドロを掻き出す」というもの。
向かう先は役場から海側に下がった駅のさらに海側、
瓦礫の撤去が進み、ようやく仮の堤防ができたということで
8月24日に立ち入りが許可されるようになった地域でした。
ほとんどの家が全壊か半壊で、暮らしている方はほとんどいませんが、
側溝がヘドロや砂で埋まり、虫がわいて不衛生ということで、
8月のバスツアーのチームから引き継いでの作業です。
おっしゃ、がんばるで!


沿岸部では津波で運ばれたヒ素が検出されているという
ニュースがあったので、工業用のマスクとゴーグルをつけました。
手袋は軍手とゴム手袋と両方持っていき、
泥が大量の水分を含んでいたため、ゴムが大活躍でした。
あまりに暑くて汗と息で逆に窒息しそうだったので、
そのうちマスクもゴーグルも外してしまいました。
とにかく気をつけるべきは、熱射病。
絶対無理をしないこと、というお達しでした。

側溝は、まず重たい蓋を外すのも一苦労で、専用の道具を使ったり
若者たちはウリャァーと手で外していました。
入ってみると意外に深い。
私は腿のあたりまで埋まってしまいます。
その深さに海からの砂とヘドロがぎっしり詰まっているのです。

重たいヘドロをスコップで地面まで持ち上げます。
かき出す人と、袋を押さえる人、餅つきのように自然に一対になります。
数袋できたら交代。
若者男子でも、うぉー腕イテー!腰ヤベー!と叫びながらの作業です。
ヘドロを詰めた土嚢袋はさらに重く、引きずれば破れてしまうし
持ち上がらないし、スコップが足りない女子たちには重労働でした。
でもみんな黙々+和気あいあいとそれぞれにできることをやり、
道ばたにはどんどん土嚢袋が積み上がっていきました。
炎天下、1時間に1〜2回の休憩を、と言われていて、
それは休み過ぎでは?と思っていたのだけど大間違い。
目の前がかすんできたら急いで水分と塩分を補給。
こんなところで倒れたら大迷惑だから、体調管理もだいじな仕事です。

意外にもハエは見かけず、蚊など刺す虫もいなくて、
ヘドロをかき混ぜた時以外は臭いもほとんどありませんでした。
掘ると出てくるのはコオロギや何かの幼虫、大量のガラス片、
コンクリートブロック、家の一部、陶器片などの生活のかけら、
錆びて原形のわからないものたち、
ビニールハウスの骨組み、時に化学肥料、
危険だかなんだかわからないけれど、とにかく掘り出す。
海から運ばれた大きな貝殻もたくさんありました。
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ほんの一部を見ただけですが、何もかもが「こんなに…」という量。
いくら土嚢袋を積み上げて片付いたように見えても、
この山この後どこに持っていってどうするんだ? と見当もつきません。
それでも、自然の災害と思えば「負けねえ」「ここで海と生きるんだ」
という気持ちで取り組むことも、まだできる。と思う。
これが放射能に汚染されていて生活のめども立たないとなったら、
どれほど絶望的か。


お昼のお弁当のあと、仮設トイレのある山下駅まで歩いて行きました。
雑草に覆い尽くされて廃線のように見えますが、
3月11日までは使われていた線路です。
半年という歳月を噛み締める。
それでもまだ、あの日のままの物がこんなにもある。
これでもまだよくなった方で、ここまで
大量の瓦礫を片付け続けた人たちの半年間がある。
それでもまだ、住み慣れたふるさとに戻れない人たちの
これからの日々がある。
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地元の方に勧められて駅の歩道橋に登ってみると、
1.5kmくらい先の海が遥かに見えました。
あんなに遠くの海が、丘を駆け上がってこの駅を乗り越え、
反対側の家々まで破壊したなんて。
どのおうちも一階部分がなく、柱も折れて傾いていました。
玄関扉の一番上に波に浸かった跡がついていました。
二階は無事でも鉄骨がみんな錆びてしまっていて、壊すしかないよねぇ、と
虫取りのお孫さんを連れた住民の女性がおっしゃっていました。


猫たちも探されていました。
あの時、外で遊んでいたんだね…
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側溝の蓋さえも塞いでしまうほどはびこる植物たちの力。
塩水にも負けず、けなげに秋の花を咲かせています。
全体重をかけても抜けないくらいの根っこ。
空き地と思って土嚢を積んでいたところも、きっとおうちがあった場所なのです。
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午後3時、誰も熱射病にならず、43名の一致団結によって
二方向に各100mくらいの清掃が無事終わりました。
全員全力だったけれど、見渡せる程度の距離しかできていない。
途中で帰るのが忍びなかったですが、
金曜の夜出発の次のチームにあとを託す。

午前2時間、午後2時間。
そんなちょっとでも役に立つのかなぁと思っていたけれど、
こんな作業、家族を失い、おうちがめちゃくちゃになった方たちにできるわけがなく、
自治体はもっと大きな瓦礫を処理しなくてはならない。
再び大雨が降ったらすぐにまた埋まってしまいそうな溝でしたが、
それでも、今日はきれいになった。
ほんとうにこのような一歩一歩が、人の手によって積み重ねられた先の
復興なのだと実感しました。
まだまだいくらでも猫の手が必要です。
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今日はここまで、の溝。 ↑
この先は側溝自体が壊れてしまっていて、完全に植物と瓦礫に埋まっています。
次の人、ここからよろしく!


高台の役場に置かれたボランティアセンター。
個人で集まった人たちも含め、たくさんの人が来ていました。
週末はもっと多いそうです。
スイカとおにぎりまでごちそうになり、なんだかもう
ありがとうございますという気持ちでいっぱいでした。
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ツアーの主催者が別れの挨拶で「またここに自分の掘った側溝を見に来てください」と
言い、みんな笑った。
でもほんとうに、笑ってしまうくらい小さな小さな仕事だったけれど、
「そのためにこうして人が集まることが、現地の方々の励みにもなっているのです」
と言っていただき、心を寄せるだけでなく体を使うことのたいせつさも実感した。
そしていつの日か、流れるべき水路に流れるべき水が流れ、
ここに暮らす方たちが生活環境を取り戻し、
再び海と畑とともに生きられることを心から願う。
そのためのほんのわずかな一歩としての側溝掃除にも
これだけの人手が必要だということを実感できたのは
とても貴重な体験だった。


ひたすら溝の中にいたので地元の方とお話しする機会は
ほぼなかったのだけれど、着いていきなり泣きそうだったことが。

朝、役場が開くまでコンビニの駐車場で待機中(朝食タイム)、
軽トラに乗ったむぎわら帽子のおじさんが私に近づいて来て
「あんたもあのバスで来たの? 代表者はどの人?」と尋ねました。
おじさん険しい顔しておられたので、なんかお行儀悪かったのかな、
怒られるのかな、と思いつつ、「あちらの運転手さんです」と答えました。

バスに戻ると、運転手さんが
「地元の方がみなさんに飲み物を差し入れてくださいました」
と一本ずつ冷たい飲み物を配ってくれました。
おじさんは人数を確認して、コンビニで人数分の飲み物を買ってくれたのです。
40人以上もいて、けっこうな金額になってしまうのに…

いいニュースも悪いニュースも真実もデマもウソもいろいろあるけど、
苦境にあってもこうして人から人への思いやりは示され、触れられる。
ほんとうの「がんばれ」「がんばろう」を支えているのはこういう触れ合いであって、
それはいくらあっても余るものではないと思った。
山元町のみなさん、お世話になりました。
どうもありがとうございました。


帰り道、夕暮れの阿武隈川。
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津波の被害のない地域を走っても、損傷した多くの家屋を見かける。
特に屋根の棟瓦や土壁が崩れていて、ブルーシートで覆ってある。
そうだ。津波だけでなく、今でも大きな余震に襲われている地域なのだ。


2時間半ほど走り、郡山の健康ランドで汚れを落とす。
温泉です。心苦しいくらい贅沢です。

ほんとうは夏休み、長野か熱海か日光か、近くの温泉でのんびりしたいと思ってた。
でもやっぱり、3月からずっと行きたいと思っていた被災地に行くことにした。
無力な自分に何ができるのかわからないけれど、募集しているということは
ゼロよりマシなはずだし、自分の無力さを知るのもよいと思った。
ともかく、何もなかったような日々を取り戻そうとしている東京で
何もなかったように過ごしていることに、自分が辛かっただけ。
「心をひとつに」「力を合わせて」「立ち上がろう」って言われても、
どこに向かって何に向かっているのか、まるでわからなかった。
文字通り足下が常に揺れているこの国の、これからの現実を
ほんの少しでも感じておきたかった。
自分の想像力では、到底カバーできないから。


普段なら1時間はお風呂に浮かんでいるところ、
二度と起き上がれなくなりそうなのでさっさと出て
カレーをかき込み19時に出発。
さいたま、池袋、新宿、と寄ってそれぞれ降り、
予定より早く23:30には東京駅に到着。
自然の猛威とは無関係な顔で、文明を誇って立つ巨大なビル群。
無関心をエサに増殖した原発に支えられてきた街の灯り。
ここが私の故郷。


乳母と鈴虫さんたちとお留守番してくれた銀次親分と
27時間ぶりに無事再会。
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今回私が参加したバスツアーはこちらです。
アミー号で行く 災害支援ボランティアバス
車中泊で行って帰って約24時間。
とてもよく管理されていて、初心者でも安心して参加することができました。
普段の私は体力も腕力もゼロに近いヘッポコ。あるのは根性だけ。
ともかく今日のこの数時間だけなんだから、あとで体が痛くなろうとかまうもんか、
という気持ちで集中してバカ力を発揮できました。
翌日も続けて、となったら自信がないけれど(今日もおやすみでほっとしてるけれど)
また暑さが和らいでくれば環境も違うだろうと思います。
行きたいけれどきっかけがない、車がないのにどうやって行けば、
という方には第一歩としておすすめです。
9月にもあと4便、10月には陸前高田へのツアーがあるそうです。



※9月13日(火)まで
カフェ/バー/ギャラリーともに夏休みをいただいております。



Gallery ef, Asakusa, Tokyo
旧ブログ『今週の銀次親分』
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