冬の犬猫牛まつり 6:牛2
午後の作業は、普段手が足りずなかなかやれないことを
この機に、ということでお姉さんと旧牛舎へ @14:30
屋根が瓦だ、カックイー
おもむきのある建物。
古材を集めるのが父上の趣味だったそうだ。
牛たちが踏んだり食べると危ないモノを拾い集める作業。
木材は燃やし、プラッチック破片や金属類はまとめるなど。
好奇心旺盛な牛たちが、なんやなんやと集まって来る。
外にいる牛たちはみな強くて巨大で、近づいて来ると思わず逃げ腰に。
たぶん逃げたほうがいい、うっかり吹っ飛ばされないよう。
よだれも鼻水も凍るよね。
オレもマスクの中、鼻水しかねえべさ。
ゴミを拾いながらあちこち探検。
こんなところでひっそり過ごしている牛たちも
こんなにいたんだなぁ。
つららら
時を止めた古い牛舎の中を、時折巨体がぬっと横切る。
廃墟の中、耳元で生々しく響くブシューという鼻息と、
ボスボスという足音と。奇妙な夢の中のよう。
あ、ここの牛たちも水が凍って飲めずにいる。
お姉さんに伝えると、給水係を仰せつかる。
「でもここの牛たちは強くて乱暴だから…できるかな?」と心配される。
で、できますとも押忍。
その脇を、重機に乗った伊東先生に連れ去られる豆かあさん。
先生の粗大ゴミ処理熱が収まらなくなってきた @16:00
あやこまどかは引き続きゴミ拾いと火の番。
大きくはない給水プールに、かろうじて動いている温水器からホースで注ぐ。
デカ牛たちがわらわらと集まって来る。
ものすごい勢いで舌ですくってゴブゴブと飲み、全然溜まらない。
頭のいい牛はホースごとくわえてヂュウヂュウ吸ってしまう。
近づいて来る牛の脚で地面のホースが踏まれ、
逆流して蛇口からホースがぶっ飛んでしまう。
はめに行く、戻ってホース持つ。
また踏まれて飛ぶ、はめに行く。
とっとと出さんかい、と詰め寄られる。逃げる。
その飲みっぷりと水の足りなさっぷりに呆然としながら
1時間以上ホースを握りしめて立っていた。
食べるためのロールを集める以外に、こんなに大量の水も必要なのだ。
これだけ経費のかかる牛を、100円のハンバーガーや290円の牛丼として
大量に消費していることの異常。
こんなにも手に負えない命を、私たちはいかにも手軽に享受している。
命のプロセスをすべてスキップし、病気になれば石ころのように棄て、
忌避し、無駄に死なせる、苦しんで死なせる。
水は十分に溜まることなく、満足して去って行ったのはたったの3、4頭。
他たくさんの、首さえ入れられずにひしめき合っている牛たち。
いま目の前で関わった生き物の、たった今の水とメシしか救えない。
それは犬猫の給餌と似た感覚だった。
意味もわからないままどこかで割り切って、諦めなくてはならない。
牛350頭のうちの3頭と、犬200頭のうちの20頭と。
明日も来週も保証はないけれど、でも今日の今の3頭。
それが何になるのか全然わからない。
わからないからとりあえず私は、彼らの前に立ってみる。
圧倒的な命の重量と、ニンゲンの罪の重さ。
警戒区域で餓死していった牛たちはどれだけ水を欲しただろう。
彼らにゴロンされたら私は確実に死ぬ。
なのに命の価値はこんなにも逆転しているのだ。
日も暮れて、鼻水も涙も凍らせながら心底冷えて朦朧として来る。
気温が何度なのか、線量がどのくらいなのか、
彼らを前に何も考えられず感覚が麻痺していくなか、
恐ろしさだけが根雪のように全身を締め付けていった。
あ、ロク、踏まれるから来ちゃだめだよ
タンク車を重機で引っ張ってゴミ置き場に移動しようと
あの手この手で四苦八苦していた先生とお姉さんと豆かあさんも、
どうにも動かせず時間切れでギブアップ。
誰にもかまってもらえず手がバッテンのロク @17:30
また明日ね
あまりに冷えたので車の中でも震えが止まらず、
豆かあさんと宿で先に降ろしてもらってお風呂に直行。
火の番だった二人が夜ごはんの買い出しに行ってくれたありがと。
ようやくお酒も交えて翌日の計画など話し合う。
0時前にバタンキュー。
二日目、朝の給餌開始 @8:30
凍ったテントの氷とつららを舐める牛
口に入る前に鼻で割って落としてしまう。
今日も給水器は直らないのだろうか。
ふくちゃんおはようさん、ペロッ
南側は少し融けて水が出るようになった、よかった。
後ろ足も力強く。
一歳半になるのに体が大きくならないちび太。
いちごちゃんとなかよく、お元気でね。
牛舎に入れない牛に、野菜のおこぼれをお届け。
やがて雪は溶け草が生える。
そんな当たり前のサイクルからさえはじき出されている動物たちのことを
多くのヒトに知ってほしい。
これは「かわいそうな牛」の話ではなく私たち自身の導いた結果であり、
私たちがこのまま目と口を閉じて進むということは
彼らを二度目の餓死へと追いつめることであり、
やがてまた別の場所でも同じことが起きるのだということを。
ロールまで終わってきりのいいところで辞去 @10:00
やまゆりの岡田さんともお会いでき、
真っ先に銀さんへのお悔やみの言葉をいただいた。
まだ早いけれど我々にはもう一つ午後の任務が。
[つづく]
Gallery ef, Asakusa, Tokyo
旧ブログ『今週の銀次親分』
この機に、ということでお姉さんと旧牛舎へ @14:30
屋根が瓦だ、カックイー
おもむきのある建物。
古材を集めるのが父上の趣味だったそうだ。
牛たちが踏んだり食べると危ないモノを拾い集める作業。
木材は燃やし、プラッチック破片や金属類はまとめるなど。
好奇心旺盛な牛たちが、なんやなんやと集まって来る。
外にいる牛たちはみな強くて巨大で、近づいて来ると思わず逃げ腰に。
たぶん逃げたほうがいい、うっかり吹っ飛ばされないよう。
よだれも鼻水も凍るよね。
オレもマスクの中、鼻水しかねえべさ。
ゴミを拾いながらあちこち探検。
こんなところでひっそり過ごしている牛たちも
こんなにいたんだなぁ。
つららら
時を止めた古い牛舎の中を、時折巨体がぬっと横切る。
廃墟の中、耳元で生々しく響くブシューという鼻息と、
ボスボスという足音と。奇妙な夢の中のよう。
あ、ここの牛たちも水が凍って飲めずにいる。
お姉さんに伝えると、給水係を仰せつかる。
「でもここの牛たちは強くて乱暴だから…できるかな?」と心配される。
で、できますとも押忍。
その脇を、重機に乗った伊東先生に連れ去られる豆かあさん。
先生の粗大ゴミ処理熱が収まらなくなってきた @16:00
あやこまどかは引き続きゴミ拾いと火の番。
大きくはない給水プールに、かろうじて動いている温水器からホースで注ぐ。
デカ牛たちがわらわらと集まって来る。
ものすごい勢いで舌ですくってゴブゴブと飲み、全然溜まらない。
頭のいい牛はホースごとくわえてヂュウヂュウ吸ってしまう。
近づいて来る牛の脚で地面のホースが踏まれ、
逆流して蛇口からホースがぶっ飛んでしまう。
はめに行く、戻ってホース持つ。
また踏まれて飛ぶ、はめに行く。
とっとと出さんかい、と詰め寄られる。逃げる。
その飲みっぷりと水の足りなさっぷりに呆然としながら
1時間以上ホースを握りしめて立っていた。
食べるためのロールを集める以外に、こんなに大量の水も必要なのだ。
これだけ経費のかかる牛を、100円のハンバーガーや290円の牛丼として
大量に消費していることの異常。
こんなにも手に負えない命を、私たちはいかにも手軽に享受している。
命のプロセスをすべてスキップし、病気になれば石ころのように棄て、
忌避し、無駄に死なせる、苦しんで死なせる。
水は十分に溜まることなく、満足して去って行ったのはたったの3、4頭。
他たくさんの、首さえ入れられずにひしめき合っている牛たち。
いま目の前で関わった生き物の、たった今の水とメシしか救えない。
それは犬猫の給餌と似た感覚だった。
意味もわからないままどこかで割り切って、諦めなくてはならない。
牛350頭のうちの3頭と、犬200頭のうちの20頭と。
明日も来週も保証はないけれど、でも今日の今の3頭。
それが何になるのか全然わからない。
わからないからとりあえず私は、彼らの前に立ってみる。
圧倒的な命の重量と、ニンゲンの罪の重さ。
警戒区域で餓死していった牛たちはどれだけ水を欲しただろう。
彼らにゴロンされたら私は確実に死ぬ。
なのに命の価値はこんなにも逆転しているのだ。
日も暮れて、鼻水も涙も凍らせながら心底冷えて朦朧として来る。
気温が何度なのか、線量がどのくらいなのか、
彼らを前に何も考えられず感覚が麻痺していくなか、
恐ろしさだけが根雪のように全身を締め付けていった。
あ、ロク、踏まれるから来ちゃだめだよ
タンク車を重機で引っ張ってゴミ置き場に移動しようと
あの手この手で四苦八苦していた先生とお姉さんと豆かあさんも、
どうにも動かせず時間切れでギブアップ。
誰にもかまってもらえず手がバッテンのロク @17:30
また明日ね
あまりに冷えたので車の中でも震えが止まらず、
豆かあさんと宿で先に降ろしてもらってお風呂に直行。
火の番だった二人が夜ごはんの買い出しに行ってくれたありがと。
ようやくお酒も交えて翌日の計画など話し合う。
0時前にバタンキュー。
二日目、朝の給餌開始 @8:30
凍ったテントの氷とつららを舐める牛
口に入る前に鼻で割って落としてしまう。
今日も給水器は直らないのだろうか。
ふくちゃんおはようさん、ペロッ
南側は少し融けて水が出るようになった、よかった。
後ろ足も力強く。
一歳半になるのに体が大きくならないちび太。
いちごちゃんとなかよく、お元気でね。
牛舎に入れない牛に、野菜のおこぼれをお届け。
やがて雪は溶け草が生える。
そんな当たり前のサイクルからさえはじき出されている動物たちのことを
多くのヒトに知ってほしい。
これは「かわいそうな牛」の話ではなく私たち自身の導いた結果であり、
私たちがこのまま目と口を閉じて進むということは
彼らを二度目の餓死へと追いつめることであり、
やがてまた別の場所でも同じことが起きるのだということを。
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