揺るがない人
昨夜の観音裏、自宅前の一葉桜。
つぼみと混じっている時期がいちばんかわいい。
今朝の姿。
あ、銀次親分、お出迎え光栄です。
今朝も元気ですね!
ゴロンまでしてくださって光栄です。
お礼にモフモフ。
14:46 黙祷。
あの地震の後、とても営業できる状態ではなくて
シャッターを半分閉めて床に座り込んでいた。
夕方、シャッターをくぐって入って来たのは
東京大空襲被災者のKさんだった。
私も参加する予定だった浅草での証言イベントを終えて、
コーヒーを飲みに寄ってくださったのだ。
その時のKさんは、まるで地震など気にしていないみたいに
飄々となさっていた。
「ど、ど、ど、どうでしたイベントでみなさん
揺れたでしょう会場で」
「そうねぇ、けっこう揺れたわねぇ。
コーヒーくださいな。
はぁまったく」
え、そんだけ…
ちょ、ちょっと待ってくださいね、
カップも割れちゃったし、コーヒーカッターも道具も壁の土まみれで…
いっしょにコーヒーを飲みながら、ぼーとする。
ラジオでは徐々に明らかになる被害の様子や
都内の電車が全部止まっていることなどを伝えていた。
どれくらい時間が経ったかもわからなかったが
たぶん一時間くらいしてKさんは「さ、帰るか」と言い出した。
「いや、今ラジオで言ってましたよ、
電車動いてないんだからここにいてくださいよ。
うちに泊まってもいいし、
今夜はいっしょにいましょうよ!」
とお願いしたが、Kさんは
「空襲のときも京橋から歩いたものよ。
まったく空襲記念日の次の日に
こんなことになるなんて。ねぇ」
と、あくまで帰る気だ。
Kさんにとって、東京中の電車が止まるような事態でも、
空襲の夜に比べたらなんてことなかったのだと思う。
Kさんは一家で隅田川の言問橋に逃げて、
橋につかまって水の中で猛火を耐えた。
いっしょにいたはずのお父さんとお姉さんは亡くなった。
しかし70代前半にしか見えない若々しいKさんも、
山下さんと同じ歳だ。
ご自宅は練馬区で、そこまで帰ると言い張る。
電車ないし、外は寒いし、どうかどうか、と頼んでも、
「なんとかなるわよ、帰ります」
と、すでにわさわさしている通りへ出て行ってしまった。
Kさんの背中を見送りながら、3.10の様々な証言がだぶった。
逃げ惑う人波に、離した手が永遠に離れてしまった夜のこと。
いずれ電車が動き始めても、それまでの間
寒い中で歩いたり待ったりすれば体に堪える。
無事に家にたどり着けるだろうか。
野宿なんてすることになったら…
その夜は電話がつながらず、
なんとしても引き留めるべきだったと一晩後悔した。
翌朝自宅に電話がつながり、Kさんは朗らかな声で応えてくれた。
「Kさん、無事でよかった! ど、ど、ど、どうでしたか!」
「ちゃんと着いたわよー 電車でね。
まぁ着いたら0時過ぎてたけどね」
「そんなに! 寒かったでしょう疲れたでしょう」
「小川町まで歩いたからちょっと足は痛いけどねぇ、
私はだいじょうぶよ、却って心配かけてごめんなさいね」
細い体に宿した揺るぎない強さ。
この人たちは揺るがない。
山下さんのことも想った。
一人暮らしだし近所だから駆けつけようとしてもきっと
「だいじょうぶよ!あなたもお店たいへんでしょう?」
と言ったことだろう。
惨事に巻き込まれ、乗り越えて来た人々の強さは
なにかと比べることのできないくらい凛としている。
かつて山下さんに問われた。
「あなたたちの世代で核をなくしてくれるの?
心配なのよ、あなたたち。だから私がんばってるのよ」
世界で唯一の被爆国が、今放射能を地球にばらまいている。
ごめんなさい。
強くならなくてはね。
一歩ずつ。
Gallery ef, Asakusa, Tokyo
旧ブログ『今週の銀次親分』
つぼみと混じっている時期がいちばんかわいい。
今朝の姿。
あ、銀次親分、お出迎え光栄です。
今朝も元気ですね!
ゴロンまでしてくださって光栄です。
お礼にモフモフ。
14:46 黙祷。
あの地震の後、とても営業できる状態ではなくて
シャッターを半分閉めて床に座り込んでいた。
夕方、シャッターをくぐって入って来たのは
東京大空襲被災者のKさんだった。
私も参加する予定だった浅草での証言イベントを終えて、
コーヒーを飲みに寄ってくださったのだ。
その時のKさんは、まるで地震など気にしていないみたいに
飄々となさっていた。
「ど、ど、ど、どうでしたイベントでみなさん
揺れたでしょう会場で」
「そうねぇ、けっこう揺れたわねぇ。
コーヒーくださいな。
はぁまったく」
え、そんだけ…
ちょ、ちょっと待ってくださいね、
カップも割れちゃったし、コーヒーカッターも道具も壁の土まみれで…
いっしょにコーヒーを飲みながら、ぼーとする。
ラジオでは徐々に明らかになる被害の様子や
都内の電車が全部止まっていることなどを伝えていた。
どれくらい時間が経ったかもわからなかったが
たぶん一時間くらいしてKさんは「さ、帰るか」と言い出した。
「いや、今ラジオで言ってましたよ、
電車動いてないんだからここにいてくださいよ。
うちに泊まってもいいし、
今夜はいっしょにいましょうよ!」
とお願いしたが、Kさんは
「空襲のときも京橋から歩いたものよ。
まったく空襲記念日の次の日に
こんなことになるなんて。ねぇ」
と、あくまで帰る気だ。
Kさんにとって、東京中の電車が止まるような事態でも、
空襲の夜に比べたらなんてことなかったのだと思う。
Kさんは一家で隅田川の言問橋に逃げて、
橋につかまって水の中で猛火を耐えた。
いっしょにいたはずのお父さんとお姉さんは亡くなった。
しかし70代前半にしか見えない若々しいKさんも、
山下さんと同じ歳だ。
ご自宅は練馬区で、そこまで帰ると言い張る。
電車ないし、外は寒いし、どうかどうか、と頼んでも、
「なんとかなるわよ、帰ります」
と、すでにわさわさしている通りへ出て行ってしまった。
Kさんの背中を見送りながら、3.10の様々な証言がだぶった。
逃げ惑う人波に、離した手が永遠に離れてしまった夜のこと。
いずれ電車が動き始めても、それまでの間
寒い中で歩いたり待ったりすれば体に堪える。
無事に家にたどり着けるだろうか。
野宿なんてすることになったら…
その夜は電話がつながらず、
なんとしても引き留めるべきだったと一晩後悔した。
翌朝自宅に電話がつながり、Kさんは朗らかな声で応えてくれた。
「Kさん、無事でよかった! ど、ど、ど、どうでしたか!」
「ちゃんと着いたわよー 電車でね。
まぁ着いたら0時過ぎてたけどね」
「そんなに! 寒かったでしょう疲れたでしょう」
「小川町まで歩いたからちょっと足は痛いけどねぇ、
私はだいじょうぶよ、却って心配かけてごめんなさいね」
細い体に宿した揺るぎない強さ。
この人たちは揺るがない。
山下さんのことも想った。
一人暮らしだし近所だから駆けつけようとしてもきっと
「だいじょうぶよ!あなたもお店たいへんでしょう?」
と言ったことだろう。
惨事に巻き込まれ、乗り越えて来た人々の強さは
なにかと比べることのできないくらい凛としている。
かつて山下さんに問われた。
「あなたたちの世代で核をなくしてくれるの?
心配なのよ、あなたたち。だから私がんばってるのよ」
世界で唯一の被爆国が、今放射能を地球にばらまいている。
ごめんなさい。
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旧ブログ『今週の銀次親分』
by ginji_asakusa
| 2011-04-11 17:01
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浅草ギャラリー・エフの看板猫・銀次親分の日々。
by 銀次親分
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